
新ハイキング選書は数多く発刊されているが、第一巻が「西上州の山と峠」佐藤 節著、第二巻「富士の見える山」小林 経雄著、第三巻「漂白の山旅」佐藤 節著、「一等三角点のすべて」多摩 雪雄著が第四巻、そしてこの「一等三角点の山を歩く」は第五巻となる。この頃の新ハイキング選書はハードカバーで装丁されている。いずれも美しいカバー画が添えられており、この本の場合でも、武川 吉一氏の北穂高岳の絵が美しい。
なお、新ハイキング選書の一等三角点関連の本には、本書を含め以下があります。
一等三角点のすべて 新ハイキング選書 第四巻
一等三角点の山を歩く 新ハイキング選書 第五巻
一等三角点の名山100 新ハイキング選書 第九巻
一等三角点の名山と秘境 新ハイキング選書 第十八巻
一等三角点の山々 新ハイキング選書 第二十巻
内容はタイトルのとおり一等三角点の山を取り上げて、その概略図と著者が登ったときのルートの状況、エピソードなどが添えられている。ただし1000弱もある一等三角点の山をすべて網羅しているわけではなく、北海道 1座、東北地方北部 16座、東北地方南部 16座、関東地方 13座 甲信越地方 21座、東海地方 12座、九州地方 1座 計80座となっている。(最後にリストがあります)

取り上げられている山は、どちらかというと東日本側(関東、東北)に偏重している。関東の三角点ファンならこの本を手にとって登った方も多いのではないだろうか。横山 隆氏は冒頭で、そのような人を一等三角点病患者と呼んでいる。まぁ、そのような人も居るのではないかと思うが、何でもコレクターが居るように、三角点を見て歩く人も居るのである。
私は三角点コレクターではないので、選んで登っている訳ではないが、山頂に三角点があれば、忘れない限り一応写真に収めておく。三角点のある場所は、確かにそこがその山の山頂であり、日本の、いや、地球上にあるまぎれもないその一点の場所であり、そこに居ることの証である。たとえホワイトアウトで周りが何も見えなくても、確かにそこに居る証である。
私の場合、三角点に関していくつかの思い出はあるが、印象深かかったのは赤石岳や前常念岳だ。南アルプスの赤石岳は日本最高所の一等三角点(富士山は二等三角点)だが、私が初めて登ったときは、再測量をしていたのだろうか、三角点の上に木でりっぱな櫓が組まれていた。台風通過直後だったが、その櫓は壊れずに建っていた。櫓が組まれた三角点に遭遇するのは珍しい。しかも最高所の一等三角点で。今後はお目にかかれないだろう。
北アルプスの常念岳の山頂は花崗岩の大岩が累々と重なりあった山頂で、山頂の憩いをゆっくり楽しめるような場所ではなかった。三角点もあるだろうが、どこの岩陰にあるのか分からなかった。というか、探す気にもなれなかった。人が次々とやってくるので、気持ちも落ち着かない。山頂から離れて前常念に向かうとそこは静寂そのものだった。さっそく雷鳥が現れて気が和んだ。大岩をまたぎながら徐々に高度を下げる尾根は、瞬く間に白くガスって孤独感さえ感じるくらいになった。やがて三角点を確認し、そこが前常念岳であることがわかった。傍らには壊れそうな石室が赤い屋根だけを出していた。国土地理院はなぜ200mほども高い常念岳に一等三角点を置かず、前常念岳に置いたのであろうか。常念岳の大岩だらけの山頂を避けてのことだろうか。

常念岳(左)と一等三角点のある前常念岳(右)
常念岳のほうが前常念岳よりも200m近く高い
蝶ヶ岳への登りにて
2010年8月2日撮影
前常念岳の一等三角点標石
標高2661.78m
この傍に避難小屋(石室)がある
2010年8月3日撮影
関連記事: 関東の主な一等三角点
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