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TS-520 VFOフィルターの特性

​投稿日 2021年01月28日

以前何かに使えるかなと考えて購入しておいたトリオHFトランシーバーTS-520のVFO。オークションで1200円くらいだったでしょうか。周波数は5.0MHzから5.5MHzです。まだ、使えるかなと回路図を眺めていると、むむ! 出力にフィルターが無い。何だコリャと思いながら、電源(12V)をつないで出力スペクトラムを見てみました。下のほうの写真のように多くのスプリアスが出ているようです。(中央に簡単なフィルターが入っているが、それにしてもスプリアスが多い)

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トリオHFトランシーバーTS-520のVFO

5.000MHZから5.500MHz

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VFOの回路図

一般的なLC発振回路にバッファアンプの構成

発振部の出力には簡単なフィルターがあるが、バッファアンプの出力にはフィルターが無い

まさかそのまま使うことは無いと思いますので、TS-520の回路を見渡してみました。するとやっぱりちゃんとしたフィルターが入っていました。

 

ところで余談ですがTS-520の受信周波数構成は、一般的なダブルスーパー・ヘテロダインですので、まず各ハムバンドの周波数をヘテロダインOSCと第一ミキサーでミックスして第一IFの8.895MHzに変換します。それとVFOの出力5.500MHzを第二ミキサーでミックスして第二IFの3.395MHzに変換します。さらにIFフィルターで片サイドバンドをカットした後BFOとミックスして信号を取り出します。

8.895MHzの第一IFはBPFを通過したあと第二ミキサーに入ります。VFOの出力はLPFを通過した後第二ミキサーに入り、第一IFとミックスされて第二IFに変換されます。このようにLPFが入っていますが、VFOに内蔵させずに第二ミキサーの直前で入れているのはTS-520の場合、スプリット運用を可能にする外付けVFO(第二VFO)を接続することがあること、およびFIXチャンネルのXTAL OSCの出力も第二ミキサーに加えることができるようになっているため、これらで1つのLPFを共有するようになっているためです。少しでもローコストを計ろうということでしょうか。まぁ、当然のことと思いますが。

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トリオHFトランシーバーTS-520の第一、第二IF付近

赤枠内がLPF(T10, T11, T12)

その下のQ9は受信側第二ミキサー

端子VFOにVFO出力の5.5 - 5.0MHzが、RIFに第一IFの8.895MHzが入力されている

第二ミキサーで第二IF3.395MHzを得る

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実装の様子 トリオHFトランシーバーTS-520のIF基板(X48-1060)

BPFとQ9(第二IFミキサー)の位置

VFO入力とLPF出力間にネットワーク・アナライザーをつなげば特性を観測できる

回路図のように第二ミキサー(Q9)の直前にフィルター回路があります。7次のLPFと思われますが、T10とT12にコンデンサーが並列接続されているちょっと変わった回路です。基板のVFO入力とLPF出力にネットワーク・アナライザーをつないで特性を観測してみました。

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トリオHFトランシーバーTS-520のVFOフィルターの特性を実測

通過帯域と阻止領域にリプルがあるが、非常に急峻な特性のLPF

T10に並列のC56(100pF)とT12に並列のC59(33pF)の役割がよくわかりませんので、まずそれらを除いて8MHz辺りがカットオフのLPFで特性をシミュレーションしてみました。T10, T11, T12のインダクタンスは分かりませんので、カットアンドトライで実測に似せてみました。下図のように、11MHz(5.5MHzの二倍)は-35dB、16.5MHz(5.5MHzの三倍)は-53dBという結果になりました。L1は並列コンデンサー100pFとの共振周波数が11MHzになるように、L2は100pFとの共振周波数が15MHzくらいになるように選んでおきました。

ts520_vfo12.jpg

次にC56とC59を入れてみます。(シミュレーションではC1とC2) すると下図のように11MHzと15MHzにノッチが出来、全体的に減衰特性が急峻になりました。左の11MHzのノッチは-80dB、右の15MHzのノッチは-87dBです。つまりT10とT12に入っている並列のコンデンサは11MHzと15MHzにノッチをつくり特性を急峻にする効果があるようです。

ts520_vfo13.jpg

最後にVFOの出力と、LPF通過後のスプリアスをスペクトラム・アナライザーTinySAで観測してみました。

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VFOそのままの出力

多くのスプリアスが観測されている

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VFO出力のLPF通過後のスペクトラム

スプリアス11MHzが-70dbに抑えられている

​基本波との差 55dB(1/300000)

その他のスプリアスもきれいに一掃されている

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VFO出力を先日自作したバターワース 5次LPFに通してみた

11MHzが-41.5dB、基本波との差38dB(1/6000)

15MHzは-68dB 基本波との差64.5dB(1/2800000)

変換コネクタの関係で外付けATTを通していないため基本波が-3.5dBと強めに入力されている

トリオのHFトランシーバー TS-520のVFOフィルターの特性を観測してみました。ちょっと変わった回路なのでコイルに並列のコンデンサーの役割が知りたかったのですが、実測とシミュレーションの結果、ノッチを設けて特性を急峻にする効果があるようです。おそらく阻止帯域内にノッチを設けて遮断特性を改善するエリプティックLPFではないかと思いますが、真ん中のコイルに並列コンデンサーがありません。

(JF1VRR)

jf1vrr(AT)jarl.com

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