
温度調節計で遊ぶ オン/オフ制御
投稿日 2011/10/21
計装システムで使用される温度調節計を入手しPID制御の勉強をしています。
入手した温度調節計は横河電機のUT150です。
温度調節計とは、温度の検出と制御が一体になった装置で、手のひらに乗るくらいの小さな装置です。
昔ながらのこたつのサーモスタットのような単純なオン/オフ制御から高度なPID制御まで、コンパクトなボディーに組み込まれています。
ボイラーや電熱炉の温度制御など、工業用で用途は様々です。
最終的にはPID制御を理解するための勉強として、取り上げてみました。
UT150は温度調節計としての機能のほとんどを内蔵しているので、勉強にはうってつけです。

温度調節計 UT150
まずUT150についてですが、仕様コードが/RN 追加仕様/ALというものです。
/Rはリレー接点出力です。ほかに電圧パルス出力や4-20mAカレントループ仕様のものがありますが、このリレー接点b出力では、オンかオフかの出力のみで、連続的な制御信号は出せません。
/Nは一般型で、冷却側出力ができないタイプという意味です。
/ALはアラーム出力が可能という意味です。温度2点を設定でき、その温度になったらアラーム出力を出します。今回は現場で使うわけではないのでアラームは使いません。

発砲スチロールのトロ箱で作った実験装置 右がUT150 左がオペアンプの電圧増幅器
実験装置は、発砲スチロールの秋刀魚のトロ箱で作りました。
熱源は100Vの豆電球です。UT150の内部リレーは耐圧240Vなので、直接内部リレーにつなぎました。
温度センサーはK型熱電対です。
今回のUT150は計測温度を外部出力できないので、このままでは読み取れません。このため別途記録用温度センサーを用意し、その電圧出力をDMMで読んで、GPIBでパソコンに送って記録し、リアルタイムでグラフ化しました。
使用した記録用温度センサーは、LM35DZで、その出力をオペアンプで10倍し、1℃あたり100mVとしています。たとえば20℃は2.000Vとなるので、パソコン側でさらに10倍して温度に変換しました。

トロ箱の内部 熱源は豆電球。左に熱電対とLM35DZ温度センサー
UT150は高度なPID制御もできますが、今回は、オン/オフ制御を試してみます。
実際の計測に入る前にUT150の設定を行わなければなりません。
UT150には多くのパラメータがありますが、オン/オフ制御に関連したパラメータは、
IN: 測定入力レンジの指定です。ここで温度センサーの種類を指定します。
SV: Set Point Valueで、目標温度です。
CTL: ONF オン/オフ制御です。
HYS: オン/オフ制御のヒステリシスです。目標温度からどのくらい離れたらオン/オフするかの温度幅を指定するパラメータで、1.0℃とした場合、±0.5℃離れたらオン/オフすることになります。もし熱源が敏感な場合、この幅が狭いと頻繁にオン/オフを繰り返すチャタリングという現象を引き起こすことになります。
FL: 測定入力フィルターです。OFFまたは1から120秒の平均化フィルターのようです。
BS: 測定入力バイアスです。温度センサーの出力を補正することができます。
これらのパラメータの設定は、フロントパネルから入力できます。
今回の設定は、
IN: 2 K型熱電対 0 - 600℃
SV: 25℃ 目標温度
CTL: ONF オン/オフ制御
HYS: 1.0℃ ヒステリシス±0.5℃
FL: フィルターなし
BS: バイアスなし
外気温(室温)は20℃です。

オン/オフ制御 計測結果 約10分
計測結果は、K型熱電対と記録用のLM35DZ温度センサーの直線性が異なるため、補正をしてあります。
ほぼ±0.5℃のヒステリシスで目標温度25.0℃の制御が行われています。
この制御はこたつのサーモスタットと同じで、もっとも簡単な制御です。熱源の豆電球は応答が遅いのでヒステリシス1℃でも、チャタリングは起こさず、まずまずの制御が行われています。
オン/オフ制御では、ノコギリ状になるのは仕方がありません。
次回は比例制御の実験をしてみます。
(JF1VRR)